2025.12.12
股関節の痛み
臼蓋形成不全で手術しかないと言われたあなたへ|実は“今できる保存的アプローチ”があります
「股関節がポキポキ鳴る気がする」
「なんとなく違和感が続いている」
そんな不安を抱えながら病院を受診し、
「臼蓋形成不全ですね。将来的には手術しかありません」
そう告げられた瞬間——
頭が真っ白になった、という方は少なくありません。
まだ仕事も家庭も、やりたいこともたくさんある。
できることなら、人工股関節(THA)の手術はできるだけ避けたい。
そう思うのは、とても自然な感情です。
実は、臼蓋形成不全と診断されたからといって、
すぐに手術を決断しなければならないケースばかりではありません。
股関節の「形」そのものは変えられなくても、
使い方・安定性・負担のかかり方は変えることができるからです。
この記事では、
・なぜ「手術しかない」と言われることが多いのか
・股関節が不安定になる本当の理由
・そして、今の段階だからこそできる“保存的アプローチ”について
専門的な視点から、できるだけわかりやすく解説していきます。
目次
臼蓋形成不全とは?なぜ「手術しかない」と言われやすいのか
臼蓋形成不全とは、股関節の受け皿(臼蓋)が浅い状態を指します。
本来はお椀のように大腿骨頭を包み込みますが、その“かぶり”が浅いため、股関節が不安定になりやすい構造です。
この不安定さがあると、
-
股関節が前方・内側にズレやすい
-
動かすたびに当たりが起きやすい
-
周囲の筋肉や関節包に負担が集中する
といった状態が起こりやすくなります。

なぜ「手術しかない」と言われるのか
臼蓋形成不全は骨の形の問題なので、レントゲンを見れば「浅さ」ははっきり分かります。
そのため医療現場では、
骨の形は変えられない→ 将来的にすり減る→ 最終的には人工股関節(THA)
という説明になりやすく、
「手術しかない」という印象が強く残るのです。
ただ股関節の受け皿(臼蓋)が浅い状態でも、股関節が安定した位置で使えているかどうかで、
痛みや進行スピードは大きく変わります。
特に40代で出てくる違和感や痛みは、
「骨の浅さ」そのものより、使い方の崩れが引き金になっているケースが多いのです。
次は、なぜ臼蓋形成不全の方に
股関節がポキポキ鳴ったり、鼠径部が気になりやすいのか
その理由をもう少し具体的に見ていきます。
股関節がポキポキ鳴る・鼠径部が気になる理由
臼蓋形成不全の方に多いのが、
-
股関節を動かすと「ポキッ」「コキッ」と音が鳴る
-
足のつけ根(鼠径部)がなんとなく気になる
-
長く座ったあとや、立ち上がりで違和感が出る
といった症状です。
音や違和感の正体は「股関節のズレ」
臼蓋のかぶりが浅いと、股関節は安定しづらく、前方や内側にズレやすい状態になります。
特に、
-
デスクワークで長時間座る
-
骨盤が後ろに倒れた姿勢が続く
こうした状況では、大腿骨頭が前方に押し出されやすくなります。
その結果、動かした瞬間に腱や筋肉が引っかかったり、関節周囲で当たりが起きる
これが、「ポキポキ鳴る」「引っかかる感じ」として感じられるのです。

大事なのは「音そのもの」よりも…
股関節の音が鳴る=すぐに危険、というわけではありません。
ただし、
-
音+違和感が続く
-
動き始めに毎回気になる
-
鳴る側が決まっている
こうした場合は、股関節が安定した位置で使えていないサインと考えられます。
なぜ「保存療法だけ」では進行してしまう人が多いのか
病院で行われる保存療法は、一般的に
-
日常生活での注意(無理をしない、負担を減らす)
-
痛み止めや湿布
といった内容が中心になります。
保存療法は「今をやり過ごす」ためのもの
保存療法の目的は、
-
痛みを強くしない
-
日常生活を何とか続けられる状態を保つ
-
手術が必要になる時期まで様子を見る
という、いわば“その場しのぎの治療”です。
そのため、
-
股関節にどんな負担がかかっているのか
-
なぜ同じ場所ばかり痛くなるのか
-
どうすれば負担そのものを減らせるのか
といった部分まで、積極的に介入されることはありません。
「いずれ手術」という前提になりやすい理由
人工股関節(THA)は、進行した股関節の痛みに対して確立された治療法です。
そのため医療現場では、
-
今は保存療法で様子を見る
-
限界が来たら手術を考える
という判断になりやすく、
「今は耐えて、いずれ手術」という構図が自然にできあがります。
カギは「求心位」|臼蓋が浅くても安定させられる理由
「臼蓋が浅いなら、結局どうにもならないのでは?」
多くの方が、そう感じてしまいます。
ですが股関節の問題は、骨の形そのものよりも「どの位置で使われ続けているか」が重要です。
求心位とは「股関節が一番負担の少ない位置」
求心位(きゅうしんい)とは、
大腿骨頭が臼蓋の中心に収まっている状態のこと。
臼蓋が浅くても、この位置で使えている時間が長いほど、
股関節にかかる負担は少なくなります。
問題になるのは、
-
前方や内側にズレたまま
-
体重がかかり続けること
この状態が続くことです。

学術的にも「ズレた位置での荷重」が問題とされています股関節形成不全を対象にした研究では、
-
臼蓋の被りが浅いほど
関節の接触面積が小さくなり、局所的な接触圧(contact stress)が増加する -
さらに骨同士が滑るような力(剪断ストレス)が大きくなる
ことが報告されています。
これらの接触圧・剪断ストレスが繰り返されることで、
軟骨や関節唇が傷み、変形性股関節症(OA)へ進行しやすくなる
というメカニズムが研究でも示されています。
つまり、
「浅いこと」そのものよりも、「ズレた位置で荷重がかかり続けること」が股関節にとって大きな問題になる
という考え方は、学術的にも支持されています。
求心位を保つには「筋肉の役割」が重要
求心位は、意識するだけでは保てません。
重要なのは、股関節まわりの筋肉が正しく働くことです。
特に、
-
横から支える:中臀筋・小臀筋
-
後ろから支える:深層外旋六筋
-
前から支える:腸腰筋
これらがバランスよく働くことで、
股関節は中心に保たれやすくなります。


臼蓋形成不全は、確かに骨の形の問題です。
しかし、
-
ズレにくい位置で
-
筋肉に支えられ
-
日常生活でも再現できる
この条件がそろえば、股関節への負担は大きく変わります。
「いずれ手術」と言われた方でも、
その“いずれ”を遠ざける選択肢はある
私たちはそう考えています。
PRO-motionで行う臼蓋形成不全のコンディショニング
PRO-motionでは、臼蓋形成不全に対して
いきなり筋トレをしたり、決まった運動を当てはめることはありません。
なぜなら、「どの場面で股関節が不安定になるか」は、人によってまったく違うからです。
①見つける|まずは「なぜズレるのか」を見つけることから
最初に行うのは、股関節だけを部分的に見る評価ではありません。
立ったときの姿勢、片脚で体重をかけたときの安定感、歩いたり、前かがみになったときの動き方などを通して、
「どんな動作で股関節がズレやすくなるのか」を一緒に確認していきます。
この段階で多くの方が、
「確かに、この動きのときに違和感が出る」
「この姿勢、いつもやっている」
と、自分のクセに気づかれます。

②整える|一度、股関節を“正しい位置”に戻す
評価でズレやすいポイントを確認したあとは、
施術によって股関節まわりを整えていきます。
目的は、
前や内側に逃げやすくなっている股関節を、いったん中心に戻すこと。
この段階で、
動かしたときの引っかかりが減った
音が気にならなくなった
動きが軽く感じる
といった変化を感じる方は少なくありません。
ただし、ここで終わってしまうと、日常生活に戻った途端、
また同じようにズレてしまうことが多いのも事実です。

③鍛える|大切なのは「体重がかかったとき」に保てるかどうか
股関節が不安定になるのは、寝ているときや座っているときよりも、
立つ・歩く・片脚で体重をかける場面です。
そこでPRO-motionでは、
体重がかかった状態でも股関節がズレにくくなるような動きを、段階的に練習していきます。
バランスの取りづらい姿勢になると、
これまで無意識にごまかしていたクセが、はっきり表に出ます。
膝が内側に入ったり、
骨盤が横に流れたりすると、
「あ、今ズレたかも」と体感できるようになります。
正しく行うと、回数は多くなくても
「思った以上にきつい」と感じる方がほとんどです。
それは、今までうまく使えていなかった筋肉が、
初めて“本来の役割”を果たしているサインでもあります。

ゴールは「日常生活でズレにくい股関節」
PRO-motionのコンディショニングの目的は、ジムでできるようになることではありません。
デスクワークで長く座ったあとも、
立ち上がるときも、
歩いているときも、
股関節がズレにくい状態を保てること。
そのため、
その方の生活スタイルに合わせて、
座り方や立ち方
動き出しのクセ
といった部分まで含めて、
コンディショニングを進めていきます。
まとめ|「手術しかない」と言われても、今できることはあります
臼蓋形成不全と診断され、
「将来的には手術しかないですね」と言われたとき、
多くの方が強い不安を感じます。
それは当然のことです。
人工股関節置換術(THA)は、
進行した股関節の痛みを大きく改善できる、非常に完成度の高い手術です。
決して否定されるものではありません。
ただし一方で、
「今すぐ手術が必要な人」と「今はまだ別の選択肢がある人」がいることも事実です。
たとえば、
-
まだ初期〜前期の段階
-
日常動作は何とかコントロールできている
-
安静にしているときの強い痛みはない
こうした状態であれば、
まずは股関節が“ズレにくい身体を作る”ことに取り組む価値は十分にあります。
臼蓋形成不全があっても、すぐに変形性股関節症(OA)へ進行するわけではありません。
変形性股関節症(OA)は、
-
股関節のズレ
-
局所的な摩擦
-
剪断ストレス
といった負担が、長い時間をかけて積み重なることで起こると考えられています。
だからこそ、
-
股関節が安定した位置(求心位)で
-
日常生活や荷重動作の中でも
-
ズレにくい使い方ができる
この状態を作ることができれば、
進行を遅らせたり、将来のリスクを下げられる可能性は十分にあります。
大切なのは、
「手術か、何もしないか」という二択ではありません。
「手術しかない」と言われたその瞬間は、終わりではありません。
むしろ、自分の身体と向き合い、選択肢を知るスタート地点です。
不安な今だからこそ、
一度立ち止まり、
“知ったうえで選ぶ”という選択をしてみてください。
参考文献
-
Harris MD, Anderson AE, Henak CR, et al.
Finite element prediction of cartilage contact stresses in normal human hips.
Journal of Biomechanics. 2012;45(8):1356–1363. -
Henak CR, Abraham CL, Peters CL, Anderson AE.
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Osteoarthritis and Cartilage. 2014;22(2):210–217. -
Thomas-Aitken HD, Wong P, et al.
Increased cartilage contact stresses in hips with acetabular dysplasia are associated with early osteoarthritis.
Clinical Biomechanics. 2018;53:79–85. -
Ganz R, Leunig M, Leunig-Ganz K, Harris WH.
The etiology of osteoarthritis of the hip: an integrated mechanical concept.
Clinical Orthopaedics and Related Research. 2008;466(2):264–272. -
Sakuma T, et al.
Biomechanical factors contributing to the development of hip osteoarthritis in acetabular dysplasia: a review.
World Academy of Sciences Journal. 2022.
執筆
片浦 聡司
PRO-motion代表取締役 / 理学療法士 / 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT) / (公財)日本オリンピック委員会(JOC)医科学強化スタッフ(水泳競技(2015~2016))
名古屋大学医学部卒。急性期病院で整形外科領域を中心に臨床経験を積み、姿勢・動作の分析から痛みや不調の原因を見立て、再発予防につながるコンディショニング指導を得意とする。
2015年より2年間、JOC医科学強化スタッフとして国際大会(ユニバーシアード等)にも帯同。
高齢者からトップアスリートまで幅広くサポートしている。
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