2025.12.25

ひざ関節痛

【理学療法士が解説】人工膝関節(TKA)術後のリハビリ完全ガイド

人工膝関節の手術(TKA)を受けたあと、こんな気持ちになっていませんか?

  • 「リハビリって、結局なにをどこまでやればいいの?」

  • 「病院では教わったけど、退院後が不安…」

  • 「頑張っているのに、曲がらない/歩きにくい/痛みが残る」

  • 「このやり方で合ってるのか分からない」

TKAは、関節そのものの痛みを減らし、生活を取り戻すための大きな一歩です。
ただし、手術を受けただけで“動き”まで自動的に良くなるわけではありません。

実は術後に差が出るのは、
「いつ・何を・どんな順番でリハビリするか」

リハビリがうまく進むと、
膝は「曲がる」「伸びる」だけでなく、歩く・階段・立ち座りがラクになり、日常生活の不安が減っていきます。
逆に、やり方や順序がズレると、膝が固まりやすくなったり、痛みが長引いたりすることもあります。

この記事では、理学療法士の視点から
術後のリハビリを“時期ごと”に整理して

  • どこまでを目標にすべきか

  • 何を優先して、何を後回しにするか

  • 退院後に困りやすいポイントと対策

を、できるだけ分かりやすくまとめます。

※もし今まさに「膝が曲がらない・曲げるのが怖い」という悩みが強い方は、こちらの記事も合わせてご覧下さい。
?「膝の手術後に曲がらないのはなぜ?人工膝関節(TKA)後に多い3つの原因と対処法」

目次

膝の手術後リハビリは「手術の成功率を決める後半戦」

膝の手術というと、
どうしても「手術そのもの」が一番大きなイベントに感じられます。

ですが、実際の臨床現場でははっきりしています。

手術=ゴールではない

人工膝関節の手術は、

  • 変形した関節を整える

  • 骨由来の痛みを取り除く

という点では、非常に完成度の高い治療です。

ただしそれは、
「膝の構造」を整えただけの状態。

  • 筋肉の使い方

  • 体重のかけ方

  • 歩き方や立ち座り

までは、自動的に変わりません。

痛みが取れても「動き方」は元に戻らない

よくあるのが、

  • 痛みは減った

  • でも歩くと違和感がある

  • 階段が怖い

  • 曲げ伸ばしがぎこちない

というケースです。

これは、
長年しみついた“かばう動き”がそのまま残っている
ことが大きな原因です。

手術だけで
身体の使い方までリセットされることは、ほとんどありません。

だから「リハビリの質」で差が出る

術後リハビリで大切なのは、

  • どれくらい通ったか

  • どんな運動をしたか

よりも、

? 「今の時期に、何を優先しているか」
? 「どこが動きを止めているかを見ているか」

です。

同じ手術を受けても、

  • スムーズに生活に戻れる人

  • なんとなく不安が残る人

が分かれるのは、
この リハビリの考え方と進め方の違い によるものです。

膝の手術後リハビリの目的はこの3つ

人工膝関節(TKA)のリハビリというと、
「曲げる」「筋トレをする」といったイメージが先行しがちですが、
本当に大切なのは 順番 です。

膝手術後のリハビリの目的は、大きく分けて次の3つに集約されます。

① 固めない

手術後の膝は、

  • 腫れやすい

  • 熱を持ちやすい

  • 無意識に力が入りやすい

という状態になります。

このときに大事なのは、
「とにかく動かす」ことではなく、
動かせる状態を先につくることです。

腫れや痛みが強いままでは、

  • 膝がうまく伸びない

  • 曲げようとすると力が入る

  • 動かすほど怖くなる

といった悪循環に入りやすくなります。

? リハビリの最初の目的は
“固まらない環境を整えること” です。


② 動かす

膝は、単純に曲げ伸ばしするだけの関節ではありません。

  • 膝のお皿(膝蓋骨)がスムーズに動く

  • 曲げ伸ばしの中で、わずかなねじれが起こる

  • 周囲の筋肉が協調して働く

これらが合わさって、
「膝らしい動き」 が成り立っています。

ところが術後は、

  • 角度は出ているけど動きが硬い

  • 前が突っ張って深く曲げられない

  • 曲げるたびに力が入ってしまう

といった状態になりやすいです。

そのためリハビリでは、
「何度曲がるか」だけでなく、
「どう動いているか」
を整える必要があります。

③ 使えるようにする

最終的なゴールは、ベッドの上で膝が曲がることではありません。

  • 安心して歩ける

  • 階段を怖がらずに使える

  • 立ち座りがスムーズ

  • 外出や趣味を楽しめる

こうした 「生活の中で使える膝」 に戻すことが目的です。

ここでよく起きるのが、

  • 筋トレはしているのに動作が不安定

  • 膝は治ったはずなのに歩き方が変

  • 使うほど違和感が出る

というケースです。

これは、
「動かす」と「使う」がつながっていない
ことが原因であることが少なくありません。

時期別:膝手術後リハビリの流れ(目安)

人工膝関節(TKA)術後のリハビリは、
「とにかく頑張る」よりも「今の時期に合ったことをやる」ことが重要です。

ここでは一般的な目安として、
多くの方が通る流れを4つの時期に分けて整理します。
(※実際の進み方には個人差があります)

【急性期】〜1〜2週:最優先は「腫れを減らして、動かす準備を整える」

この時期の膝は、
「動かさないと固まる」けれど「無理すると悪化する」
非常にデリケートな状態です。

この時期の目的

  • 痛みと腫れをコントロールする

  • 動かせる“土台”を作る

  • 血栓などの合併症を防ぐ

ポイント

  • 痛み止めは「我慢のため」ではなく動くため

  • 熱感・むくみ・ふくらはぎの張りをこまめにチェック

  • 曲げること以上に、まず「伸び」を確保

    • 伸展0°は、立つ・歩く・階段の基礎

この時期は「たくさんやる」より
“悪化させない範囲で毎日触る” が正解です。

【回復期】2〜6週:曲げ伸ばし+歩き方を“正しく”戻す時期

痛みや腫れが少し落ち着き、
「だいぶ動くようになってきた」と感じ始める頃です。

ここで多い落とし穴が、「動ける=もう大丈夫」と判断してしまうこと。

この時期の目的

  • 膝の曲げ伸ばしを“質よく”回復させる

  • 歩行時のかばいをリセットする

ポイント

  • 角度だけでなく
    膝のお皿まわりがスムーズに動いているか

  • 杖は「何となく卒業」ではなく安全性で判断

  • 痛みを避け続けると
    変な歩き方がクセとして固定しやすい

この時期は「膝をどう使っているか」 が、その後を大きく左右します。

【退院後】6週〜3ヶ月:ここで“差がつく”本当のリハビリ期

実はこの時期が、
一番重要で、一番手薄になりやすいフェーズです。

病院リハが減ったり終わったりして、
自己流になりやすいのもこのタイミング。

この時期の目的

  • 日常動作をラクにする

  • 膝に負担が集中しない身体を作る

ポイント

  • 階段・立ち座り・外出量を少しずつ増やす

  • 「膝だけ筋トレ」にならない

    • 股関節・足部・体幹が重要

  • 正座は無理に目指さない

    • 代わりに「困らない動作」をゴールに

ここで“使える膝”になるか、“動くけど不安な膝”で止まるか、が分かれます。

【その後】3〜6ヶ月〜:趣味・旅行・スポーツへ「戻す」段階

痛みが減り、生活はできている。
でも、

  • 長く歩くと不安

  • 旅行が怖い

  • ゴルフや運動に踏み出せない

そんな方が多い時期です。

この時期の目的

  • 膝を「気にしないで使える」状態へ

  • 再発・悪化を防ぐ使い方を身につける

ポイント

  • ゴルフ・ウォーキングなどは段階的に

  • 目標は「痛みゼロ」より
    「痛みが出にくい身体の使い方」

  • 疲労が翌日に残らないかをチェック

よくある質問(FAQ)

Q1|どれくらいで膝は「曲がる・伸びる」ようになりますか?

一概には言えませんが、目安はあります。

  • 伸び(伸展):術後早期(1〜2週)で「0°近く」を目指すのが重要

  • 曲げ(屈曲)

    • 2〜4週:90°前後

    • 2〜3ヶ月:100〜120°前後

ただし大切なのは**角度そのものより「どう止まっているか」**です。
前が突っ張る・奥が詰まる・力が入らないなど、
止まり方によってやるべきリハビリは変わります。

「〇ヶ月経ったのに〇度いかない=失敗」ではありません。

Q2|車の運転はいつからできますか?

目安は「安全にブレーキ操作ができるか」です。

一般的には

  • 術後4〜6週以降がひとつの目安

  • 右膝手術の場合は特に慎重に

チェックポイント:

  • 痛みなくブレーキを踏める

  • とっさの動作ができる

  • 長時間座っても腫れが悪化しない

不安がある場合は、主治医や理学療法士に必ず確認してください。

Q3|自転車はいつから乗れますか?

固定式バイク(エルゴメーター)→ 実車が基本です。

  • エルゴメーター:術後2〜3週頃から

  • 実際の自転車:6週以降が目安

注意点:

  • 最初は「こげるかどうか」より膝がスムーズに回るか

  • 痛みや腫れが翌日に残らないかを必ず確認

Q4|スポーツはいつから再開できますか?

目安は3〜6ヶ月以降です。

ポイントは、

  • 膝だけでなく股関節・体重移動

  • ねじり動作を膝に集中させないこと

「痛みがない=OK」ではなく、
“痛みが出にくい使い方”を作れているかが重要です。

Q5|リハビリはいつまで通う必要がありますか?

これは多くの方が悩むポイントです。

現実的には:

  • 医療保険での外来リハビリには期限や回数制限がある

  • そのため「途中で終わってしまう」ケースも少なくありません

ただし、
身体の回復が終わった=リハビリ終了ではありません。

  • 退院後〜3ヶ月以降

  • 動作や筋力の差が出始める時期

ここで適切なサポートがないと、

  • 曲がらない

  • 歩きにくい

  • 趣味に戻れない
    といった“術後の壁”が残りやすくなります。

Q6|痛みや熱感がなかなか引きません。大丈夫?

術後3ヶ月くらいまでは、

  • 軽い熱感

  • 腫れぼったさ

  • 疲労後の違和感

が残ることは珍しくありません。

ただし、以下の場合は要注意です。

  • 痛み・腫れがどんどん強くなる

  • 夜間痛が続く

  • 赤く熱を持ち、発熱を伴う

  • 急に動かせなくなった

これらがある場合は、
早めに医療機関へ相談してください。

PRO-motionの考え方|分析する → 整える → 鍛える で「術後の壁」を越える

人工膝関節(TKA)の術後リハビリで、
多くの方がつまずくのはこのポイントです。

  • 病院でのリハビリが終わった

  • でも、まだ不安・違和感・動かしづらさが残っている

  • 「もう仕方ないのかな…」と感じている

PRO-motionでは、こうした状態を
「よくある術後経過」ではなく、「評価が途中で止まっている状態」
と考えています。

① 分析する|「何度曲がるか」ではなく「どこが止めているか」

術後リハビリでは、
どうしても 角度(◯度曲がる・伸びる) が基準になりがちです。

しかし実際には、

  • 前が突っ張っているのか

  • 奥が詰まっているのか

  • 曲げるときに力が入りすぎているのか

  • 歩くときにどこでかばっているのか

によって、やるべきことはまったく変わります。

PRO-motionでは、
膝単体ではなく、歩行・立ち座り・階段動作まで含めて評価し、
「今、どこがブレーキになっているのか」を整理します。

② 整える|膝だけで完結させない

人工膝関節の術後トラブルで多いのが、

  • 膝を守ろうとして股関節が動いていない

  • 足首が硬く、膝に負担が集中している

  • 体幹が不安定で、立ち座りが毎回つらい

といった “膝以外の問題” です。

PRO-motionでは、

  • 膝蓋骨まわりの動き

  • 股関節・足部との連動

  • 無意識に入っている防御的な力

を一度リセットし、
「膝が頑張らなくていい状態」 を作ることを重視しています。

③ 鍛える|「動けるようになってから」意味のあるトレーニングを

よくあるのが、

  • 伸びないのに筋トレ

  • 腫れているのに負荷アップ

  • とりあえずスクワット

といった、順番が逆のトレーニングです。

PRO-motionでは、

  1. 動ける状態を作る

  2. 正しい動きを身体に覚えさせる

  3. その上で、必要な筋力を鍛える

という順序で進めます。

その結果、

  • 歩くのが楽になった

  • 階段が怖くなくなった

  • 旅行や趣味に前向きになれた

といった “生活が変わるリハビリ” につながります。

退院後こそ「再設計」が必要な人も多い

病院でのリハビリは、
制度や期間の制約があるのが現実です。

そのため、

  • 退院後にリハビリが途切れてしまった

  • 自己流で不安を抱えながら続けている

  • 何が正解かわからなくなっている

という方も少なくありません。

PRO-motionでは、
退院後に置き去りにされやすい部分を、もう一度整理し直す
ことを目的にサポートしています。

まとめ|膝手術後リハビリは「後半戦」で決まる

人工膝関節(TKA)の手術は、
ゴールではなく スタート地点です。

  • 手術後に膝が固まるのは珍しいことではない

  • 問題は「人工関節」ではなく「動きの回復」

  • リハビリは 固めない → 動かす → 使える の順番が重要

特に、
退院後〜数ヶ月の過ごし方で、その後の差が大きく開きます。

もし今、

  • 曲げ伸ばしに不安が残っている

  • リハビリが終わってしまい、どうしていいかわからない

  • 頑張っているのに変化を感じられない

そんな状態であれば、
「まだ間に合う可能性」は十分にあります。

大切なのは、
今の膝が“どこで止まっているのか”を正しく知ること。

PRO-motionでは、
人工膝関節術後の方に向けて
評価から始めるコンディショニングを行っています。

不安が残る方は、
一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。

執筆

片浦 聡司

PRO-motion代表取締役 / 理学療法士 / 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT) / (公財)日本オリンピック委員会(JOC)医科学強化スタッフ(水泳競技(2015~2016))

名古屋大学医学部卒。急性期病院で整形外科領域を中心に臨床経験を積み、姿勢・動作の分析から痛みや不調の原因を見立て、再発予防につながるコンディショニング指導を得意とする。
2015年より2年間、JOC医科学強化スタッフとして国際大会(ユニバーシアード等)にも帯同。
高齢者からトップアスリートまで幅広くサポートしている。

体験プログラムのトレーニング風景 体験プログラムのトレーニング風景 体験プログラムのトレーニング風景

Trial Program

コンディショニングが
気になる方の「はじめの一歩」

体験プログラム

  • 自分の身体の
    クセがわかる!

  • 家でできる
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    伝授します

  • 所要時間
    60〜90分

一人ひとりに合わせて行いますので、運動が苦手な方も
もちろん大歓迎。無理な営業は一切しませんので、安心してご参加ください。