「手術はうまくいったと言われたのに、
思ったように膝が曲がらない…」
人工膝関節の手術(TKA)を受けたあと、
このような不安や違和感を抱えている方は、実はとても多くいらっしゃいます。
・レントゲンも問題ないと言われた
・でも、曲げようとすると突っ張る・怖い・これ以上いかない
「このまま固まってしまうのでは?」
「手術は失敗だったのでは?」
そんな不安が頭をよぎるのも、無理はありません。
ですが、先にお伝えしておきたいのは
“人工膝関節そのものが原因で曲がらなくなっているケースは、実は多くない”
ということです。
膝が曲がらない背景には、
- 手術前から続く“動きのクセ”
- 術後にうまく回復しなかった膝の動き
- リハビリでは見落とされやすいポイント
が関係していることが少なくありません。
この記事では、
「なぜ膝の手術後に曲がらなくなるのか?」
その理由を、わかりやすく解説しながら、整理してお伝えします。
「もう手遅れかもしれない…」と感じている方ほど、
ぜひ最後まで読んでみてください。
膝の手術後、なぜ「曲がらない」状態が起こるのか?
人工膝関節の手術(TKA)を受けたあと、
「時間が経てば自然に曲がるようになる」と思われがちですが、
実際には “何もしなければ曲がりにくくなる方向に進んでしまう” ことも少なくありません。
これは、手術が失敗したからではなく、
膝の構造と回復の仕組みに理由があります。
手術後の膝は「何もしないと固まりやすい」
手術によって、膝の中では以下のような変化が起こります。
-
関節内に炎症や腫れが起こる
-
周囲の筋肉が無意識に緊張する
-
傷を守ろうとして身体が動きを制限する
この状態が続くと、
「曲げる動き」そのものを身体が避けるようになり、だんだん膝が“曲がらない状態”を覚えてしまうのです。
「人工関節だから曲がらない」は誤解
よくある誤解が、
「人工関節にしたから、もう膝は曲がらない」という考えです。
しかし実際には、
人工膝関節そのものが“曲がらなくしている”ケースは多くありません。
問題になりやすいのは、
といった、「動きの問題」です。
「曲げる練習をしたかどうか」で差が出る
手術中には、
医師が実際に膝を曲げて 「これくらい曲がる」 という確認をしています。
ただしそれは、
筋肉が力を入れていない状態での話です。
術後に、
-
痛みが怖くて動かさなかった
-
リハビリが途中で終わってしまった
-
「90度曲がったからOK」で止まっていた
こうした場合、
筋肉や関節周囲が緊張・癒着し、
“曲がるポテンシャルがあるのに使われないまま” 固まってしまうことがあります。
大切なのは「どこが止めているのか」を知ること
「何度まで曲がるか」だけを見てしまうと、
本当の原因を見逃しやすくなります。
重要なのは、
-
どこで引っかかる感じがするのか
-
前が突っ張るのか、奥が詰まるのか
-
曲げるときに力が入ってしまっていないか
こうした “止めている場所”を正しく見極めること です。
次の章では、
人工膝関節後に膝が曲がらなくなる人に特に多い
3つの具体的な原因について、順番に解説していきます。
人工膝関節(TKA)後に膝が曲がらない人に多い3つの原因
① 曲げるときに必要な膝のねじれ(スクリューホームムーブメント)がうまく出ていない
膝は、ただ「曲がる・伸びる」だけの関節ではありません。
本来の膝関節は、
伸びる・曲がる動きの中で
わずかな“ねじれ(回旋)”を伴って動く仕組みになっています。
これを スクリューホームムーブメント と呼びます。
人工膝関節の手術後に曲がらない方の多くは、
-
手術前から膝や脚のねじれが強かった
-
O脚・X脚、歩き方のクセが長年あった
-
股関節や足首の動きが硬い
といった背景があり、
「膝だけ真っすぐにしても、動きの連動が戻っていない」
状態になっています。
その結果、
-
曲げ始めが重い
-
途中で引っかかる感じがする
-
力を入れないと曲がらない
といった症状が出やすくなります。
? これは 人工関節の問題ではなく、動きの再学習不足 です。
② 膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)が硬く、滑っていない
「曲げると膝のお皿の上が突っ張る」
「前側が詰まる感じがする」
このタイプの方に多いのが、
膝蓋上嚢(膝のお皿の上にある袋状の組織)の滑走不全です。
本来、膝を曲げるときには、
-
膝のお皿(膝蓋骨)が下へ動く
-
それに合わせて、膝蓋上嚢もスムーズに伸びる
という動きが起こります。
しかし術後に、
-
痛みを避けて曲げなかった
-
前側のケアや動きをあまりしていない
-
「角度」ばかり気にしていた
こうした場合、
膝蓋上嚢が硬くなり、前側でブレーキがかかる ようになります。
この状態では、
どれだけ力を入れても「前が止まる」感覚が出やすく、
無理に曲げるほど痛みや恐怖心が強くなります。

③ 創部・深部組織の癒着(関節包・筋膜)
「皮膚は柔らかいのに、奥が動かない」
「何かに引っ張られている感じがする」
これは、
皮膚の下にある深部組織の癒着が関係していることがあります。
手術後、
-
動かす量が少なかった
-
痛みを理由に避けていた動きが多い
-
リハビリ期間が短かった
こうした場合、
筋膜・関節包・脂肪体などが
“動かない状態のまま固まってしまう” ことがあります。
特に多いのが、
-
曲げると奥が詰まる
-
途中から一気に動かなくなる
-
力を抜くと全然曲がらない
といったケースです。
これは、
「筋力不足」というより
“動くスペースがなくなっている”状態 と言えます。
3つに共通する重要なポイント
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、
これら3つの原因に共通しているのは、
? 人工関節そのものの問題ではない
? 「動き」が回復しきっていない
という点です。
だからこそ、
だけでは、
かえって悪循環になることもあります。

膝が曲がらない人に共通して多い“落とし穴”
人工膝関節の手術後、
「リハビリはやったはずなのに曲がらない」
という方には、いくつか共通点があります。
それは、本人の努力不足ではなく、
術後リハの“前提”そのものにズレがあるケースが多い、ということです。
①「入院中のリハビリ=十分」と思っている
多くの方が誤解しやすいのが、ここです。
入院中のリハビリは、
が中心になります。
一方で、
-
深く曲げるための準備
-
膝のお皿や周囲組織の動き
-
ねじれを含めた膝本来の動き
まで丁寧に取り切れるケースは、
時間・頻度の制約上、どうしても限界があります。
そのため、
「退院=回復のゴール」
と思ってしまうと、
実は一番大事な時期を逃してしまうことがあります。
②「90度曲がったからOK」で止まっている
術後リハでは、
「まずは90度を目標にしましょう」
と言われることが多くあります。
これは決して間違いではありません。
ただし問題なのは、
-
90度=完成
-
これ以上は無理
-
あとは日常生活で自然に
と考えてしまうことです。
90度というのは、
“スタートラインに立った状態”に近く、
-
そこからどう動かすか
-
どこを柔らかくするか
-
どう力を抜いて曲げられるか
で、その後の差が大きく出ます。
③「痛み=悪」と思って、動きを避けてしまった
手術後、痛みが出るのは自然なことです。
ただ、その痛みをすべて
「動かしてはいけないサイン」
と受け取ってしまうと、問題が起きやすくなります。
結果として、
-
曲げる動きを避ける
-
前側が怖くて触らない
-
力が入ったまま動かす
という状態が続き、
動かないまま身体がその状態を覚えてしまうことがあります。
これは
「痛みに弱いから」ではなく、
正しい判断基準を教えてもらう機会がなかった
というだけのことがほとんどです。
④「どこが止めているか」を見てもらっていない
多くのリハビリでは、
といった “角度” が評価の中心になります。
しかし実際には、
-
前が突っ張っているのか
-
奥が詰まっているのか
-
途中で力が入ってしまうのか
によって、
やるべきことはまったく変わります。
「曲がらない」ではなく、
「どこで止まっているのか」
ここを見てもらっていないまま進んでいる方は、とても多いです。
⑤「時間が経ったから、もう無理」と思ってしまう
3か月、半年、1年…。
時間が経つほど、不安は強くなります。
ですが実際には、
-
動きの原因が整理でき
-
無理なことをやめ
-
必要なところにだけアプローチできれば
時間が経ってから改善するケースも珍しくありません。
大切なのは、
「いつ手術をしたか」よりも
「今、何が膝の動きを止めているか」 です。
自己判断でやってはいけないこと
「早く曲がるようになりたい」
「このまま固まるのが怖い」
そう思うほど、
良かれと思って逆効果なことをしてしまうケースがあります。
ここでは、人工膝関節(TKA)後に
特に避けてほしい行動を整理します。
① 痛みを我慢して力任せに曲げ続ける
「痛くても曲げないとダメだと思って…」
これは、非常によく聞く言葉です。
確かに、ある程度の違和感は避けられません。
しかし、
-
顔をしかめるほどの痛み
-
力を入れないと動かない状態
-
曲げるたびに恐怖が強くなる
こうした状態で無理に続けると、
-
筋肉がさらに緊張する
-
防御反応が強くなる
-
余計に動かなくなる
という 悪循環 に入りやすくなります。
? 「我慢して動かす=回復が早い」ではありません。
② 正座や深くしゃがむ動きを、いきなり試す
「正座できるようになりたい」
「どこまで曲がるか試したくなる」
気持ちはとても自然ですが、
準備ができていない段階での深屈曲は、
前側の組織や恐怖心を強く刺激します。
結果として、
-
前が突っ張る
-
痛みが残る
-
その後しばらく動かしづらくなる
といったことが起こりやすくなります。
“目標の動作”をいきなりやらない
これがとても大切です。
③ YouTubeやSNSのストレッチを片っ端から試す
情報が多い時代だからこそ、
ついやってしまいがちなのがこれです。
ですが、術後の膝は、
-
人によって止まっている場所が違う
-
痛みの出方が違う
-
動かしていい範囲が違う
という 非常に個別性の高い状態 です。
汎用的な動画をそのまま真似すると、
-
本来動かすべきでない所を刺激する
-
逆に必要な所に届いていない
というズレが起こりやすくなります。
④ 「筋力が足りない」と思って、いきなり鍛える
曲がらない=筋力不足
と思われる方も多いですが、
は、
動きを邪魔している要因を強化してしまう
ことがあります。
まず必要なのは、
です。
? 鍛えるのは、その“あと” です。
⑤ 「もう時間が経ったから無理」と決めつける
一番避けてほしいのが、これです。
時間が経つと確かに条件は変わりますが、
-
何が原因かを整理し
-
やること・やらないことを選び直す
ことで、
改善の余地が残っているケースは少なくありません。
諦めて何もしなくなることが、
一番のリスクになります。
まとめ|膝の手術後に曲がらないのは「まだ整っていないだけ」のことが多い
人工膝関節の手術後に
「膝が思うように曲がらない」
「このまま固まってしまうのでは…」
と不安になるのは、決して珍しいことではありません。
そして多くの場合、それは
人工関節の失敗でも、あなたの努力不足でもありません。
この記事でお伝えしてきた通り、
膝が曲がらなくなる背景には、
といった “動きの問題” が隠れていることが非常に多いのです。
だからこそ、
-
ただ我慢して曲げる
-
角度だけを追いかける
-
自己流でストレッチを続ける
といった方法では、
かえって回復が遠回りになることもあります。
大切なのは「評価 → 整える → 動かす → 鍛える」の順序
膝をもう一度しっかり曲げていくために必要なのは、
-
どこが止めているのかを正しく見極め
-
無理に動かす前に“整える”
-
力を抜いた状態で正しい動きを再学習する
という 順序のあるアプローチ です。
これは、
「まだ間に合うのか」「今さら意味があるのか」
と悩んでいる方ほど、大きな差になります。
PRO-motionの人工関節後コンディショニング
PRO-motionでは、
人工膝関節(TKA)後の方に対して、
-
角度だけを見ない評価
-
膝だけでなく、股関節・足部まで含めた動きの分析
-
痛みや恐怖心を強めない段階的なアプローチ
を大切にしながら、
「人工関節でも、自然に動ける身体」 を目指した
コンディショニングを行っています。
「もう少し曲がるようになりたい」
「この違和感の正体を知りたい」
そんな方は、一度ご自身の膝の状態を
専門的に“見てもらう” という選択肢も考えてみてください。
膝の手術は「ゴール」ではなく、
“もう一度、動ける身体をつくるためのスタート”です。
正しい順序で向き合えば、
まだできることは残っているかもしれません。
少しでも不安がある方は、
一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。